何をするツールか——公式の言葉は「校正」ではなく「アシスト」
文賢は、SEO業界で知られるウェブライダーが提供する日本語の文章支援ツールです。公式サイトは「最先端のAIと独自のアルゴリズムで、文章の『校正』『推敲』をアシストするクラウドツール」と説明しています。この「アシスト」という語が、評判が割れる原因のすべてだと言っていいくらいです。
公式が挙げている機能は5つです。
ルール校正・ルール推敲。「文賢が独自に開発したルールとアルゴリズムで文章をチェックします」。助詞の連続、一文の長さ、漢字とひらがなの比率といった読みやすさの観点を機械的に当てていく部分です。
文章表現。「文中にある言葉に対して、文賢に登録された3,500以上の文章表現の中から、類語や言い換え、関連した表現をレコメンドします」。辞書引きを画面内で済ませる機能です。
チェックリスト。「独自のチェックリストを登録できます」。媒体ごとのレギュレーションを登録して、入稿前に人が目視で確認する項目を固定化する使い方になります。
AIアシスト。「最先端の大規模言語モデルを用いたAI機能。ボタンをクリックするだけで、改善点やリライト案、アイデアなどがもらえます」。ただし初期設定はOFFで、公式に「オーナーが使用を許可しなければ、ユーザーはAIアシストを使用できません」と明記されています。チームで配る前提の設計です。
マスキング。「個人情報や機密情報を隠した状態でAIに文章を送ることができます。ドラッグ操作やキーワード指定で手軽にマスキングでき、元の文章もそのまま保持されます」。ここが他の文章ツールと最も違う点で、後述します。
料金は2026年に作り直された——初期費用11,880円はもう無い
文賢の料金を検索すると、いまだに「初期費用が1万円以上かかる」と書いた記事が上位に出てきます。これは古い情報です。公式ヘルプセンターのお知らせに「新規ご契約時の初期費用を無料とすることになりました」とあり、2025年9月1日以降の新規契約では初期費用がかかりません。それまでは税込11,880円でした。
さらに2026年5月19日、決済システムの切り替えにあわせて新規契約者向けのプラン体系が変わりました。現在の料金は次のとおりです。
| プラン | 1年更新 | 1か月更新 | 初期費用 |
|---|---|---|---|
| パーソナル | 1,650円(税込)/月 | 1,980円(税込)/月 | 0円 |
| ビジネスチーム | 2,750円(税込)/月 1ユーザーあたり | 3,300円(税込)/月 1ユーザーあたり | 0円 |
2026年8月19日に公式サイトおよび公式ヘルプセンターで確認。支払い方法はクレジットカード(1か月更新・1年更新のいずれも可)と銀行振込(1年更新のみ)。旧プラン(30日間の利用料2,178円・税込/1ライセンス、5ライセンス以上5%OFF・15ライセンス以上10%OFF・30ライセンス以上15%OFF)は2026年8月31日まで追加購入が可能と案内されています。
無料で試せる範囲もはっきりしています。新規契約にはいずれのプランでも14日間の無料トライアルが付き、公式は「AIアシストやルール校正など、文賢のすべての機能をご利用いただけます」「トライアル期間中にキャンセルされた場合、料金は一切発生しません」と書いています。機能を絞った体験版ではなく全機能が開くので、判断材料としては十分です。
有料に切り替わる条件は、単純に14日を過ぎるかどうかです。個人なら1年更新で月1,650円、月換算で缶コーヒー数本分。かつて多くの人が入口で止まっていた1万円超の初期費用が消えたことで、「合わなければ14日で降りる」が現実的な選択肢になったというのが今の状況です。
「使えない」と言われる3つの理由
IT製品レビューサイトのITreviewでは、文賢は8件のレビューで5点満点中3.6点でした(2026年8月19日確認)。件数が少ないので点数そのものは参考程度ですが、不満の中身は一貫しています。
1. 誤字脱字を期待すると外れる。広告・販促業の利用者から「誤字脱字チェックの見落しが多い」という指摘が出ています。文賢は文章の読みにくさや表現を指摘する設計で、誤字脱字の全件検出をうたっていません。ここを校正ツールとして期待して契約すると、初日に「使えない」となります。誤字脱字を機械的に潰したいなら、別の校正ツールと役割を分けるほうが早いはずです。
2. すでに書ける人ほど得るものが少ない。新聞社で7年間記者を務めた医療ライターの庄部勇太氏は、トライアルで1万字超の原稿3本を通したところ実質的な修正箇所は1つだけだったと書いています(2020年10月のレビュー)。指摘された助詞の連続なども「意図的にやっている箇所が多かった」とのことです。文章表現機能についても「言い換え候補の意味幅が広すぎ、提案は既知の表現ばかり」という評価でした。訓練を受けた書き手にとっては、指摘の多くがすでに知っていることになります。
3. 運用の手間が残る。ITreviewには「ルール管理がやや手間に感じる。辞書登録や表記ルールの一括管理がもっと直感的だと良い」(医療・1000人以上)、「CSVインポート機能はあるが、管理画面から連続登録するには不便」(情報通信・20人未満)、「文章保存機能がないため複数案件管理が不便」(ソフトウェア・SI・50〜100人)といった声が並んでいます。読み上げ機能についても「抑揚がなく、区切り位置が不正確」(デザイン・製作・50〜100人)という指摘があり、これは前述の庄部氏のレビューとも一致しています。
共通しているのは、文賢が人の判断を置き換えるツールではないという点です。指摘を受けて直すかどうかを決めるのは書き手側で、その判断ができる人が使うと速くなり、判断を任せたい人が使うと「精度が低い」と感じます。
それでも効く場面——生成AIに原稿を渡す前の一手間
いま文賢を検討する理由として、他の日本語ツールと最もはっきり違うのがマスキング機能です。個人情報や機密情報を隠した状態でAIに文章を送れて、元の文章はそのまま保持されます。取材メモや顧客名の入った原稿を生成AIに投げにくい、という現場は多いはずで、そこを画面内のドラッグ操作で処理できるのは実務的な差になります。
もう一つは、チェックリストとルール校正で「その媒体の決まりごと」を人ではなく画面に持たせられることです。複数のライターに同じ表記ルールを口頭で伝え続けるコストを考えると、1ユーザー月2,750円(税込・1年更新)の意味は変わってきます。個人利用で伸び悩むという評判と、編集チームで定番として使われ続けている事実が両立しているのは、この違いによるものです。
AIアシストが初期設定OFFでオーナー許可制なのも、個人には一手間ですが、チームで使うときは「誰にAIを使わせるか」を管理側が決められるという意味になります。設計思想が個人ではなくチームに寄っている、と読むのが正確です。
向かない人——ここで引き返したほうがいい
誤字脱字の検出精度だけを求めている人。文賢の主目的ではありません。実名レビューでも見落としの指摘が出ています。誤字脱字対策が目的なら、別の校正ツールを検討してください。
一人で書いていて、すでに文章が整っている人。元新聞記者のレビューが示すとおり、訓練された書き手には指摘が刺さりません。無料トライアルで自分の原稿を1本通してみて、修正したいと思う指摘が数個も出ないなら、そこで判断がつきます。
案件ごとに原稿を貯めて管理したい人。文章保存機能がないという不満がレビューに出ています。原稿の管理は別のエディタやドキュメントツールで行い、文賢は「通す場所」として使う運用になります。
チームの表記ルールがまだ存在しない組織。チェックリストやルール登録は、揃えたいルールが決まっていて初めて効く機能です。何を統一するかが決まっていない段階で導入しても、空の箱を配ることになります。まずルールを1枚の文書にするほうが先です。
最後に契約面の注意を1つ。解約(定期支払いのキャンセル)はオーナーのみが可能で、公式ヘルプに「使用期限が残っていても、日割り計算での返金対応はおこなっておりません」とあります。1年更新を途中でやめても返金はされないので、迷っている段階では1か月更新か、まず14日間の無料トライアルから始めるのが順当です。