何ができるか——「訳す」より「読み切らせる」ための道具
公式が挙げている対応形式はPDF・Word・PowerPoint・Excelの4つで、いずれもレイアウトを維持したまま翻訳します。訳文だけを吐き出すのではなく、原文と並べて表示し、そのプレビュー画面の上で要約・解説・単語の検索・AIへの質問まで済ませられる、という構成です。公式は自社を「AIドキュメント理解プラットフォーム」と説明しています。
この設計が効くのは、段組みと図表が本文と同じくらい情報を持っている書類です。実際、ITreviewに投稿された利用者は「原本と翻訳でページがずれることがある」という他ツールの問題が解消された点を評価しています。逆に、レイアウトのない素のテキストを訳すだけなら、この強みは1つも効きません。
言語は、アプリが持つ言語リストに99件が登録されています。ただし選択欄に最初から出るショートカットは日本語・英語(米国)・中国語(繁体字)の3つで、公式サイトが前面に出しているのもこの3言語です。校正・要約は翻訳と同じ画面から使え、訳語を固定したい場合は「My辞書」に用語ペアを登録します。
料金の実際——価格表の下にある「回数」が本体
プランはFree・Basic・Pro・Pro Max・Enterpriseの5つ。金額は公式の料金ページに「表示金額は税抜きです。Languiseは日本国の消費税を徴収しておりません」と明記されています。年払いは公式表記で「15%以上オフ」です。
| プラン | 月払い(税抜) | 年払い・月額換算 | 毎月の利用回数 | Upload上限 |
|---|---|---|---|---|
| Free | 0円 | 0円 | 3回 | 5MB |
| Basic | 1,200円 | 1,000円 | 15回 | 10MB |
| Pro | 3,600円 | 3,000円 | 50回 | 20MB |
| Pro Max | 7,500円 | 6,000円 | 120回 | 20MB |
注意したいのは、この「回数」が何で減るかです。公式の比較表によると、ファイルの翻訳・要約・校正はどのプランでも回数を消費します。Pro Maxでも例外はありません。一方でテキストの翻訳は、Basic以上なら回数を消費しません(Freeのみ毎日10回まで、50文字以下は無制限)。テキストの校正・要約はFreeとBasicでは消費し、Pro以上では消費しなくなります。
つまり、料金を決めているのは機能の多さではなく月に何本のファイルを通すかです。月15本を超えるならBasicでは足りず、次はProの月50回まで一気に3,600円へ上がります。ここが判断の分かれ目で、月に数本しか読まない人がProを契約すると回数が余り、月に何十本も読む人がBasicを契約すると月半ばで止まります。
Enterpriseは年間契約のみで、アカウント追加は無制限、毎月の利用回数とMy辞書をチーム内で共有できます。途中でプランを上げる場合は「未経過の月数分を返金して再契約」と公式が案内しています。
無料でどこまで確かめられるか——月3回と、Proの30日間
Freeプランは0円で、毎月の利用回数は3回。加えてアップロード上限が5MB、インポートできる文字数が1,000文字までで、プレビュー画面上での質問機能は使えません。My辞書は1つ・20ペアまで。これは「日常的に使える無料枠」ではなく、手持ちのPDFが崩れずに訳せるかを3本ぶんだけ試す枠と考えるのが実態に近いはずです。
もう少し試したい場合、公式はProに30日間無料体験を用意しています。回数が月50回に上がり、テキストの校正・要約も回数を消費しなくなるので、実務の量で試すならこちらです。ただし体験終了後に自動で課金されるかどうかは、公式サイト上で確認できませんでした。申し込み前に規約を読んでください。
書類の扱いについては、公式のセキュリティページに記載があります。LanguiseはAWS上で動作し、通信はTLSで暗号化、「文書ファイルはお客様が指定した処理を行うためにのみストレージに一時的に保存されますが、全ての処理が終わった時点で完全に消去されます」とあります。また処理にOpenAIを使っていることを明記したうえで、「OpenAIのサーバーに送られたデータは不正利用の監視目的で一時的に保存されますが、30日以内に完全に消去され、AIの学習に利用される事もありません」と書いています。ISOなどの認証取得の記載は見つかりませんでした。未公開の特許明細書のように、社外送信そのものが規程で止まる書類はこのツールの対象外になります。
向かない人——不満は「精度」ではなく精度の“ばらつき”に出ている
利用者の評価は高めです。ITreviewの評価は2件で平均4.7。ただし母数が2件しかないため、点数そのものを判断材料にはできません。読むべきは中身のほうです。
製造業の投稿者は長文の英文契約書からいきなり日本語の要約が作れる点を挙げ、「DeepLよりも翻訳精度が高い」と書いています(これは編集部の測定ではなく、投稿者個人の評価です)。一方で同じ投稿者は「外部辞書の取り込みや、My辞書の登録方法がわかりにくい」「左右の画面を連動してスクロールできるとより便利」を改善点に挙げています。もう1件も、言語選択が枠外クリックで閉じないなどUIの粗さを指摘しています。訳語を辞書で固定する運用を前提にしている人ほど、最初につまずくのはここです。
より引っかかるのはレビュー記事側の指摘です。MiraLab AIのレビューは、IT・医療など専門性の高い文章で「専門用語の翻訳精度にややばらつきが見られました」、新しい技術用語では文脈に合わない訳が出ることがある、翻訳しきれない部分が英語で残る場合がある、と書いています。おおむね1,000文字を超えると処理速度が落ち、ファイルでアップロードするとさらに遅い、とも報告されています。なお同社は公式のリリースノート(2026年8月1日「MiraLab AI様にご紹介頂きました」)に掲載されており、利害関係がある可能性がある点は割り引いて読む必要があります。
専門文書に特化した製品で専門用語がばらつくという指摘は、看過できません。ここから言えるのは、Languiseは「訳文をそのまま提出する」道具ではなく、「原文を速く理解する」道具として使うべきだということです。納品物としての翻訳を作る用途なら、My辞書での用語固定と人の確認を前提に組む必要があります。
DeepLの代替として検討している場合、比べる軸は精度の噂ではなく課金の形です。Languiseはファイル単位の回数課金で、レイアウト保持と要約・解説が同じ画面に乗ることに対して払う設計になっています。短文をその都度訳す使い方が中心なら、この設計に払う理由はありません。なお他社の現行料金は本記事の執筆時点で公式ページから確認できなかったため、金額での比較は行いません。