「無料」の範囲——ライセンスと、Communityに入っていない10機能
n8nのライセンスはSustainable Use License(Version 1.0)です。原文が許可しているのは、自社の内部業務目的または非商用・個人利用での使用・複製・配布・派生物の作成まで。禁止されているのは、自社の内部業務を超える商用利用と、対価を取って配布すること、そしてライセンス表記や著作権表示を消すことです。自社の業務を自動化する用途なら条件を満たしますが、「n8nを使ったサービスを他社に売る」形は、この文面の外に出ます。
もう一つの線引きが、edition の差です。公式ドキュメントは「Community editionはn8nのほぼ全機能を含む」としたうえで、含まれない機能を名指しで列挙しています。Custom variables、Environments、External secrets、External storage for binary data、Log streaming、Multi-main mode、Projects、SSO(SAML・LDAP)、Sharing(ワークフローと認証情報の共有)、そしてVersion control using Gitの10個です。
ここは「ひとりで使うぶんには困らないが、人が増えた瞬間に効いてくる」場所です。ワークフローを同僚と共有できない、Gitでバージョン管理できない、検証用と本番用の環境を分けられない。これらが必要になった時点で、選択肢はBusinessプラン(667€/月・年払い)以上になります。無料と有料の間に中間の価格帯がありません。
なお、設定画面からメールアドレスを登録して無料のライセンスキーを取ると、Folders(ワークフローのフォルダ整理)、Debug in editor、Custom execution dataの3つが解放されます。費用はかからないので、セルフホストするなら最初にやっておくほうが得です。
止まる原因はほぼメモリ——公式が対処法のページを持っている
セルフホストしたn8nが不安定になる理由の中心はメモリです。これは推測ではなく、公式ドキュメントに「Fix memory issues」という項目があり、そこに出るエラーメッセージまで書かれています。「Execution stopped at this node (n8n may have run out of memory while executing it)」、「Allocation failed - JavaScript heap out of memory」、あるいは「Problem running workflow」「Connection Lost」「503 Service Temporarily Unavailable」。
原因として公式が挙げているのは、JSONデータの量、バイナリデータのサイズ、ワークフロー内のノード数、Codeノード(旧Functionノード)のようにメモリを食うノード、手動実行(フロントエンド用にデータの複製が作られる)、そして複数のワークフローの同時実行です。対処は「メモリを増やす」か「消費を減らす」の二択で、後者の具体策としてデータを小さく分割する、Codeノードをできるだけ使わない、大量データを手動実行で流さない、Loop Over ItemsとExecute Workflowでサブワークフローに切り出す、が挙げられています。
実際の障害報告も公式フォーラムに残っています。2023年3月の投稿(v0.218.0・npm導入・PostgreSQL)では、通常500〜700MBのメモリ使用が突然2.4GBまで跳ね、ほぼ毎日クラッシュすると報告されています。2024年4月の投稿(v1.38.1・Docker・Ubuntu 22.04.4 LTS・SQLite)では、ワークフロー5本程度でメモリ切れによるクラッシュと再起動が起き、2vCPUに増設しても約24時間ごとにメモリが増え続けたと書かれています。同じスレッドで別の利用者が「1CPU以下ではコンテナのガベージコレクションが正しく働かない」と指摘しています。
性能の目安として、公式のベンチマークは単一インスタンスで最大220 executions/secという数字を出しています。ただしこれは4GB RAMのAWS c5a.large上で、Webhook TriggerとEdit Fieldsだけの最小ワークフローを回した結果です。ファイルを扱う実務のワークフローに当てはめる数字ではありません。編集部でVPSを契約して実測はしていないため、「何GBなら大丈夫」という自前の数字はここには書きません。
サーバー代の実費——4GBが実質の下限、9月1日に改定
XServer VPSの料金です。表示価格はすべて税込で、初期費用は無料。2026年9月1日(火)に料金改定が実施されます。公式の案内では、9月1日以降の契約更新分から改定後の料金が適用され、改定日までに更新すれば改定前の料金で契約期間を延長できます。
| プラン・契約期間 | 改定前(〜8/31) | 改定後(9/1〜) |
|---|---|---|
| 4GB・12ヶ月 | 1,800円 | 2,200円 |
| 4GB・36ヶ月 | 1,700円 | 2,035円 |
| 2GB・12ヶ月 | 1,170円 | 1,540円 |
| 2GB・36ヶ月 | 990円 | 1,265円 |
月あたりの金額(税込・初期費用無料)。2GBプランは新規受付が一時停止中のため、いまから契約するなら4GBが下限です(2026年8月28日時点・公式トップページ確認)。
比較対象として、n8n Cloudの料金も置いておきます。Starterが20€/月(年払い・月2,500回のワークフロー実行)、Proが50€/月(同・1万回)、Businessが667€/月(同・4万回)。ここでいう1実行は「ワークフロー全体の1回の実行。ステップ数やデータ量に関係なく1実行と数える」と公式が定義しています。StarterとProはクレジットカード不要で無料トライアルを開始できます。
料金ページには月払いへの切り替えもありますが、HTMLから読み取れたのは年払い時の金額だけでした。ユーロ建てのため円換算は為替で変わります。ここで「合計は月◯◯円」と円で固定して書くことはできません。
向かない人——「安いから」でセルフホストを選ぶと逆転する
いちばん向かないのは、サーバー代を浮かせたいだけの人です。VPSの4GBは9月1日から月2,200円(税込)で、n8n Cloudの最安であるStarterは年払いで月20ユーロ。両者は同じ桁で、しかもCloud側には運用の手間がありません。セルフホストが効くのは、実行回数がCloudの上限(Starterは月2,500回)を超える場合、扱うデータを外に出せない場合、Cloudにない構成を組みたい場合です。金額だけでは逆転しません。
公式ドキュメントも同じ線を引いています。Cloudは「インストール不要」で必要な技術力は「None required」、セルフホストは「Requires setup (npm, Docker, or server)」「Required for installation and configuration」。Dockerのインストールページには、セルフホストに必要な知識としてサーバーとコンテナの構築・設定、リソース管理とスケーリング、サーバーとアプリのセキュリティ確保、n8nの設定の4つが挙げられています。このうちセキュリティ更新は、n8nを止めない限り毎月ついて回ります。
チームで使いたい人にも、無料のままでは向きません。前述のとおりCommunity editionにはSharing(ワークフローと認証情報の共有)もGitによるバージョン管理も含まれず、次の価格帯はBusinessの667€/月です。ひとりで使い始めて、あとから人を足す前提なら、この段差を先に知っておくほうがいい。
日本語UIが前提の人も、現時点では慎重に判断してください。n8nにはN8N_DEFAULT_LOCALEという環境変数があり、公式は「選んだロケールでUIを表示し、未翻訳の文字列は英語にフォールバックする」と説明しています。ただし対応言語の一覧が公式ドキュメントに無く、日本語が含まれるかを一次情報で確認できませんでした。有志が作った日本語化パッケージはGitHubにありますが、第三者の非公式ビルドです。ここは英語のまま使う前提で見積もるのが安全です。
最後に手順の話を少しだけ。インストール方法は公式に5種類(1行セットアップ、Docker Compose、npm、Docker、クラウドプロバイダ)あり、公式ドキュメントはDocker Composeを推奨しています。n8nはポート5678で動き、/home/node/.n8nにデータを置きます。ここには暗号化キーも入るため、ボリュームを永続化しないと再起動で認証情報を失います。データベースをPostgreSQLに外出ししても、このディレクトリは残す必要があります。